特別セッション

初心者向け英語論文執筆セミナー:
論文執筆における生成AIの活用と課題

トム・ガリー
東京大学 名誉教授
東京大学 グローバル教育センター 特任教授
東京都市大学 教育開発機構 特任教授
東京大学附属図書館(オンライン)
2026年10月22日

自己紹介

辞書編纂者・翻訳者(日→英)
総合文化研究科・教養学部で英語教育・言語教育研究などに従事
論文指導(主査、副査):卒論6名、修論20名、博論25名
学術英語学会 名誉会長
2023年〜 生成AIと教育・研究について発信

申込者の身分計84名(10月20日時点)

大学院生・研究生41
教員・研究員27
職員10
学部学生4
その他2

申込者の所属計84名

工学系研究科・工学部19
医学系研究科・医学部13
農学生命科学研究科・農学部10
教育学研究科・教育学部7
総合文化研究科・教養学部6
新領域創成科学研究科5
理学系研究科・理学部3
法学政治学研究科・法学部3
先端科学技術研究センター3
附属病院(本郷・医科研)3
その他12
その他:大気海洋研究所(2)、情報基盤センター(2)、情報理工学系研究科、人文社会系研究科、情報学環、物性研究所、グローバル教育センター、未来ビジョン研究センター、産学協創推進本部、リサーチ・アドミニストレーター推進室

申込者の研究分野記入者46名

医学・看護学9
看護学(老年・高齢者・母性・看護管理など)、臨床疫学、疫学、エピジェネティクス、医学
生物学・農学・環境8
水圏生物科学、保全生態学、進化生物学、生化学・構造生物学、バイオミネラリゼーション、森林リモートセンシング
物理学・化学・材料7
量子物理、物性物理学、中性子光学、放射線計測、化学、高分子材料学、材料科学・分析化学
工学5
航空宇宙工学、都市工学、都市解析、資源循環
社会科学・法学・経営9
心理学、社会学、地域研究、競争法、ゲーム理論、環境社会科学、気候変動対策、イノベーション科学、マネジメント
教育学7
高等教育、教授職研究、教育工学、言語教育
人文学1
英文学
事前質問 1

どのAIツールを、どう使い分けるべきか?

ツールごとの強みと、効率的な使い方は?
ChatGPT・Claude・Grokなどの汎用ツール以外に、学術的な執筆に特に役立つツールはあるか
一つだけ有料契約するなら、どれがおすすめか
回答 1
どのAIツールを、どう使い分けるべきか?
技術の進歩が速く、新しいサービスも次々に登場
→ 一般的なおすすめは難しい
私はClaudeをよく使っている。ChatGPTとGeminiも良い選択肢
有料契約を一つだけ選ぶなら、Googleの関連ツールが豊富なGeminiかなと思う
事前質問 2

AIで校正・校閲するときの注意点は?

生成AIは主に校正・校閲に使っている
その際に気をつけるべきことは?
回答 2
AIで校正・校閲するときの注意点は?
AIの修正に「正しい・間違い」の決まった答えはない
同じモデルでも毎回違う修正をし、モデルごとに癖もある
聞き方や観点を変えて何度もやり取りし、疑問があれば理由を聞く
事前質問 3

自分の英文が学術的な文章としてふさわしいか、どう確かめる?

自分の書いたパラグラフがアカデミック・ライティングとして適切かを確認する方法は?
回答 3
自分の英文が学術的な文章としてふさわしいか、どう確かめる?
理想は、自分の分野にふさわしい文章かを自分で判断できる感覚を身につけること
それまでは、分野のモデル論文をAIに渡して文体やパラグラフの特徴を分析してもらい、分野別のガイドラインを作ってもらう
AIと作った文章がそのガイドラインに合っているかを確認する
学術的な文体は研究分野や専門によって違います
→「学術的に書いて」と頼むだけでは足りません
事前質問 4

初めての英語論文、どこに投稿すればよい?

海外のジャーナルにいきなり投稿するのはハードルが高い
大学院の紀要は日本語の論文がほとんどで、英語では投稿しにくい
最初の一本に適した投稿先は?
回答 4
初めての英語論文、どこに投稿すればよい?
おすすめは学会誌への投稿
投稿には入会が必要なことが多いが、日本国内ではかなり評価される掲載先
自分の分野の学会誌が英語論文を掲載しているか、投稿の条件を学会のウェブページで事前に確認
入会し、大会や研究会にも参加すれば、分野をよく知る機会に
大学院生のうちから、ぜひ学会に積極的に参加してください
事前質問 5

原稿全体を渡せば、AIは構造を踏まえて校閲してくれるか?

AIは全体の構造を踏まえて各箇所の整合性をとるのが苦手だと聞く
自分の英語原稿をファイルごと渡せば、プロの校閲者のように全体を見て言い回しや語を直してくれるのか
回答 5
原稿全体を渡せば、AIは構造を踏まえて校閲してくれるか?
以前のモデルは全体の一貫性を保つのが苦手
無料版は今もメモリ機能が不十分なことも
有料版なら論文ごとにプロジェクトを作り、参考資料やガイドラインを保存できる
用語などをまとめたガイドラインをAIに作ってもらい、執筆・確認のたびに何度も見てもらう最近のモデルは作業の進行に合わせて文書を更新することも
同じ文書を他のモデルに渡せば、モデルを変えても一貫性を保てる
一貫性を保つよう、意識してAIに頼む必要があります
事前質問 6

日本語で書いて、AIに英訳させるのは有効か?

日本語原稿をファイルごとAIに渡して英訳させるのは有効な方法か
訳文の精度をどう判断すればよいか
訳文が他の文献からの盗用にならないか
書きたい内容を、論文に載せられる正確な英語にするには?
回答 6
日本語で書いて、AIに英訳させるのは有効か?
公表する英文には自分が全責任を持つ
→ AIの訳文を丁寧に読み、完全に理解する
わからない箇所は、聞き方や観点を変え、別のモデルにも繰り返し聞く
自信のない箇所は日本語に逆翻訳して確認
訳の正確さをAIにチェックしてもらうことも
盗用:AIの文章が既存の文章と完全に一致することはほとんどない心配なら剽窃チェッカーや、フレーズのウェブ検索で確認
一回の翻訳やチェックでは足りません。
繰り返すうちに、少しずつ良い結果に近づきます
事前質問 7

未公開データや個人情報をAIに入力してよいか?

図表の作成や質的研究の分析は、AIで効率化できそう
未公開の情報を漏洩させないためには、何に気をつけるべきか
個人情報は匿名化するだけで十分か
回答 7
未公開データや個人情報をAIに入力してよいか?
まず利用規約を確認
→ 入力データを学習に使うかどうかの方針が書かれている
法人・大学向けの契約では、入力データの学習利用を制限・禁止しているものも
実際に漏洩の報告があるかも確認利用者は数十億人。ハッキングや漏洩の例はあるが、クラウドストレージやメールなどより危険かは不明
個人情報については法律や規則があるかもしれないので、確認を
事前質問 8

AIが直した英文は「自分の」文と言えるか?

AIで英文を校閲・修正するうちに、これは本当に自分の文なのかと悩むようになった
AIの文のほうが明らかに流暢なので、あえて自分の文を残す理由が見つからない
回答 8
AIが直した英文は「自分の」文と言えるか?
英語での自分の文体と、それが自分のものだという自信を育てるには時間がかかる
AI時代には、研究者の個性や「声」がますます重要に
AIの利用は慎重に。できるだけ自分の力で書く
AIの文が客観的に良く見えても、自分の言いたいことを自分らしく表していると確信できなければ、使わないほうがいいと思います
事前質問 9

論文執筆で、AIはどこまで使ってよいか?

AIを活かすべき場面と、使うのが望ましくない場面は?
学位論文での使用範囲は専攻ごとに定められているのか例:一切不可/言語表現の修正・翻訳まで可/仮説の構築や結果の解釈まで可
投稿論文では、著者が責任を持ち、使い方を開示すれば、使用範囲は広がる方向にあるのでは?
回答 9(1/2)
論文執筆で、AIはどこまで使ってよいか?
AIを使うかどうか、どこまで使うかは研究倫理の問題
動物実験や人を対象とする研究には、今は明確なガイドラインがある
しかし100年前、時には20〜30年前にはなかった研究者・研究参加者・社会全体の長い議論を経て形成(インフォームド・コンセント、プライバシー、匿名性など)
AIについては、その過程が始まったばかり
進歩も速く、明確なルールはまだ期待できない
AIがほぼ自律的に研究できるようになったのは今年から
→ その認識は広がり始めたばかりで、コンセンサスは全然取れていない
回答 9(2/2)
論文執筆で、AIはどこまで使ってよいか?
考え方は分野・研究者によって異なり、同じ研究者でも時期によって変わる
使い方を開示すればAI利用を認める学術誌は増加傾向
一方、強く反対し、AI利用の疑いだけで不採択にする分野・学術誌も
テーマ設定・研究方法・理論構築など、研究の核心へのAI利用はまだ十分に議論されていない
今は過渡期。ルールもコンセンサスもないことを意識しながら研究・執筆を
いちばん安全なのは、自分で英語で書いて、AIは人間のネイティブチェッカーと同じように、文法・句読点・語彙の細かい修正だけに使うことですただし、AIをもっと活用した場合より英文の質は劣るかもしれない
AI利用の開示

このスライドの作成にClaudeを使いました

申込者の情報(身分・所属・研究分野)の集計・整理
スライドの書式・デザイン
事前質問の要約・統合・言い換え
回答の日本語での作成回答は、私が英語で話した内容をClaudeが日本語の箇条書きにまとめました
回答の日本語を、セミナー動画の書き起こしでの私の話し方に近づけるよう修正